Sally Oldfield - Water Bearer

ウォーター・ベアラー(紙ジャケット仕様)

ウォーター・ベアラー(紙ジャケット仕様)

Mike Oldfieldの姉であり、マイクの「Incantations」などにも参加しているサリー・オールドフィールド。元々サリアンジーというマイクと組んでいたフォークデュオがデビューだが、他にもスティーヴ・ハケットの「Voyage of the Acolyte」のラスト曲で美声を披露していることで、プログレファンにはそれなりの知名度があるようだ。これはそんな彼女のファーストソロ。1978年作。

これをプログレでくくるのは間違っている気がするが、十分超の組曲もあり、トールキンの「指輪物語」や「シルマリリオン」が引用元としてクレジットされているなど、プログレ風味がないではない(当時の)現代的なフォークというか、あえていえばシンフォニック・フォークとでも言うべき作品だろう。

マイクの影響もあるのか、マリンバヴィブラフォンを用いたミニマム音楽風のバッキングが活躍し、アコースティックギターを含めた生楽器類のたおやかな響きとともに、安っぽくないキーボードやストリングスを交えており、非常に美しいサウンドを構築している。

全体にイージーリスニング的な印象もあるが、この手の女性ヴォーカルのソロアルバムの定番のポップすぎて聴き応えのないものにはなっておらず、オールドフィールドつながりで聴く人にも訴えるものがあるとは思う。


一曲目のタイトルトラックはマリンバやパーカッション群がリズミカルに奏でられ、サリーのヴォーカルがフォーキーな詞を歌う非常にファンタジックなもの。スケール感もあり、ドラマティックな感じもある。なお、タイトルは「水を運ぶ人」の意

次曲は一曲目からメドレーで繋がっている、十二分を超える「ソングス・オブ・ザ・クウェンディ」。トールキンの作品に出てくるクウェンディを歌ったもので、七部構成の大作。むしろ、A面は前曲とあわせて一曲のように思える。ころころ曲調が変わるが、基本は歌ものでインストバトルが繰り広げられたりはしないので、サリーのクリアな歌声を全面に渡って聴くことができる。ただ、この手の物語性のある組曲ではもう少しインストを加えて緩急をつけた方が良いような気もする。Camel風に。楽器類がいい音なんだけれど、リードを取ったりせずに、完全にサリーのヴォーカルのみがリードになるという点も惜しいところ。

B面一曲目は、冒頭のフレーズがマイクのチューブラー・ベルズを明らかに意識したような音で面白い。

後の曲はまあ、どれかを取り出してくだくだしく言うのも野暮だろう。曲のクオリティが低いとか言う意味ではなく、サウンドは基本的に変わらないので、特に言うこともない。楽曲の雰囲気は基本的に、フォークで素朴だ。トールキンを引用しているように幻想的ではあるのだけれど、仰々しいところはなく、神秘的な響きも持つ。十年早いエンヤと評されたりもするようだが、もっとこれはフォークよりだ。

最初聴いたときは凡作かなー、と思ったりもしたが、繰り返し聞いているとわりと良いじゃないかと思えてきた。


映像はこのアルバムにもボーナストラックとして収録されているシングル「Mirrors」。これは二曲目の組曲の中のあるパートを元に独立した曲として抜き出したもの。


そういえば、これの売り文句には、「マディ・プライア、アニー・ハズラムと並び称されるフィーメール・フォークの至宝」とかあるんだけれど、このラインナップってそんなに定番なんだろうか。マディとサリーはフォーク畑なのは間違いないが、アニー・ハズラムは普通フォークに分類しないだろうとは思うのだが。

ただ、三人とも結構声が似ている。