
- アーティスト: 七尾旅人,伊藤銀次
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ
- 発売日: 1998/09/19
- メディア: CD
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で、七尾旅人がついに四年ぶりにアルバムをリリースする。サードアルバムは三枚組だ。一年に一枚ずつリリースしたほうが良いんじゃないかと言うくらいの溜め込みぶりだが、久しぶりに七尾旅人の新作が聴けるというのはうれしい。
しかし、ファーストもセカンドもそうだが、私は個人的にはデジタルサウンドがさほど好みではないので、エレクトロニカなものよりはアコースティックなアプローチのものの方が好みだ。
特に、このデビューミニアルバムは、アコギ中心の弾き語り曲だけで構成されていて、その全四曲の収録曲がそれぞれに素晴らしい。七尾旅人の声の持つ戦慄すら感じさせる表現力は凄いの一言。歌詞も、独特の世界と言葉の強度があって、声の表現力とあいまって非常に印象的だ。フレーズがいちいち記憶に残る。
まごうことなき名盤の一枚。
1.おもひで!おもひで!
アコギとヴォーカル、あとバイオリン?による弾き語り。ハイトーンの声による流れるようなメロディの歌が美しい。歌詞には、なぜか「禅銃」というフレーズが出てくる。どうして、ベイリーのいかれたSFのタイトルがここに出てくるのか、すごい不思議。
2.八月
ピアノとアコギ。シンプルで、素朴でもあるメロディの良さが光る、名曲。今作では一番ポピュラリティがあるのではないかと思われる。この曲には、カート・ヴォネガットの小説の名フレーズ「プーティーウィッ」が挟み込まれている。
いつか、ネットで七尾旅人のインタビューがあり、好きな作家として、ルイ・フェルディナン・セリーヌとヴォネガットを挙げていた。この二人を一度に挙げるとは、と非常に共感を覚えた。二人とも表面的にはかなり違うが、資質は非常に似ている。ペシミズムとヒューマニスティックのない交ぜになった笑い。
3.戦闘機
七尾旅人の声に圧倒される一曲。攻撃性を感じさせる荒々しさのある歌い方と歌詞のインパクト。
4.メロ 〜走る戦慄、笑う旋律〜
流れるようなメロディと裏声を駆使した歌い方が何ともいいがたい印象を残す。歌詞カードがないと詞はほとんど聞き取れないだろう。一番最初に私が聴いた七尾旅人はこれ。この曲がきっかけで七尾旅人を聴き始めた。
Youtubeからライブ。
[LIVE]七尾旅人 - 八月
このライブバージョンには、注意して欲しい。原曲の流れるようなメロディや歌のテンポをわざと壊すようにして歌っていて、原曲の良さを知っている人が聴く分には面白いアレンジだが、原曲を知らない人には大きな誤解を与えてしまう。
今作は全体から、若さ、というか壊れやすい生々しい感性が感じられる独特の作風。これ以降のアルバムにはなくなってしまったものがあるような気がする。アコギを中心にした弾き語りものでは、ミニアルバム「蜂雀」*1での完成度や表現力、空気感の成長ぶりには及ばないだろうが、メロディの美しさでは随一のもの。
来月発売予定。三枚組は聴き疲れしそうだ。エレクトロニカ系か、弾き語り系か。それとも両者が混在しているのだろうか。

- アーティスト: 七尾旅人
- 出版社/メーカー: HEARTFAST
- 発売日: 2007/09/11
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*1:ミニっつっても五十分あるが