Isildurs Bane - MIND Vol.2

ライヴ

ライヴ

スウェーデンプログレバンド、イシルドゥルス・バーネのMindシリーズ第二作、2001年リリース。
Mindシリーズ第二作はライブアルバムという形式だけれど、スタジオでのオーバーダブや、各所に挿入された実験的なインスト(会話が挟みこまれたりしている)で全体にコンセプト性を与えている。また、いくつかスタジオ盤未収録の新曲もあり、disc2の20分以上に渡る「Celestial Vessel」組曲や「Holy Fools」などは新曲とのこと。その他、オーケストラ入りの楽曲をバンドのみで演奏したものや、アルバムバージョンを再構築したものなどが含まれ、ただ、楽曲をライブ演奏したものではない。

その他、Mind1からの「Flight Onward」や二曲を組み合わせた「Opportunistic Medicine」、フェルディナン・シュヴァル(シュヴァルの理想宮)をテーマにした「Cheval」の抜粋や、「The Voyage」の抜粋などなどの、室内楽などを取り入れ、初期の叙情派プログレから、シリアスな現代音楽的アプローチへとシフトした時期以降の楽曲を総捲りした集大成的ライブとなっている。

音楽性はMindとそう大きな違いはない。ヘヴィなロック的ダイナミズムに、ヴィブラフォンマリンバなどのパーカッションを取り入れ、イアン・アンダーソンを思わせる荒々しいフルート、ヴァイオリンどころかオーケストラも交えた大スケールのサウンドだ。

ナレーションや間を生かしたコンセプチュアルな展開でじわじわと盛り上げていくドラマティックさもあり、時にはCamelのように叙情的なギターが美しいメロディを奏でたり、ヘヴィなアンサンブルがKing Crimsonのようにせき立てる場面もあり、またこのバンドの一つの特色でもあるパーカッションを巧みに用いたコミカルな演出まで、シリアスなだけではない多彩さがある。

序盤の「Cheval」からして、Camel的ギターメロディから、コミカルなパートや癒しチックなミドルテンポの綺麗なメロディを奏でるパートまでが含まれている。

特に「Exit Permit」はサックスやオーケストラを駆使し、エレクトリックギターもドライブしまくるダイナミックな大作で、イシルドゥルス・バーネの持てる力をすべて注ぎ込んだとおぼしき渾身の傑作。圧巻のスケールだ。前半三分の一はもう圧倒的なエネルギーが噴出するハードな演奏が炸裂し、一端落ち着きを見せる中間部では、オーケストラ、あるいはフルートを主体にクラシックのようにシンフォニックかつ叙情的に展開し、そしてラスト数分からはドラムにスラップを多用するベースが復活し、パーカッション、ギターも再登場してハードに締める。このライブのハイライトのひとつ。

次に続く「La Ruche, Studio Nos. 3, 4 & 7」などは、リズム隊はお休みで、ストリングスを主体に、ヴァイブ、マリンバなどのパーカッションが彩りを添えて、非常に綺麗で牧歌的な落ち着きの感じられる曲になっている。

「Holy Fools」はダークで重い曲調が印象的で、後半のテンポアップしてギターがリードしていく場面が良い。それとやはり要所のパーカッションが効果的だ。もっともっとパーカッションを全面に出してくれてもいいんだけどなあ。

「Ataraxia」はMind1収録のクラシカルな静かな曲。

続く二枚目では、語りの入った「Extroversion」の後、いきなりの名曲「The Flight Onward」で幕を開ける。スタジオ版に比べると音が手薄な感はあるが、さすがの一曲。

続く「Celestial Vessel」はナレーションやローテンポの演奏が淡々と続いていく。20分ほどの大曲だけれど、ハードな盛り上がりが期待できる曲ではない。

その後はややミドルテンポのギターがリードする叙情的な曲調の曲が続く。

そして「The Voyage」の抜粋ではハードなアンサンブルからメロウなギターがソロを取ったり、三つ目のパートではパーカッションとアンサンブルを効果的に組み合わせたり展開がころころ変わるせわしない曲調になるがこれも面白い。この種のアンサンブルの機敏さもまた魅力だ。たるさがない。

事実上のラスト「Exit Visa」は、クラシックの演奏にギターが切り込んだようなドラマティックな曲で、またもスラップなベースが活躍し、ドラム、パーカッションをフィーチャーしたパートがあったり、短い時間にエッセンスを詰め込んだようなクライマックスになっている。Permitもそうだが、オーケストラサウンドと組み合わさることでド迫力の演奏が凄まじい。


CD二枚にぎっしりと凝縮して詰め込まれた圧倒的なパフォーマンス。これは凄い。ポピュラーな人気とは縁がなさそうなこの人たちだけれど、それでもコンスタントな活動が出来るのは、州からの補助金があるかららしい。