藁人形論法と人を批判する人の藁人形論法

ワクワクできていた期間はすごく短かったです。

以下の記事は一度アップしてから何度も加筆訂正しているので、私の引用と当該記事での記述が食い違っている可能性があります。注意してください。
「藁人形」をとりあえず作ってみて、フクロにしてみて勝ったつもりになっている人について - 愛・蔵太の気になるメモ(homines id quod volunt credunt)
もうさすがにこの話題には口をつぐむのかなと思ったら、まだ全然やるつもりらしくてびっくりしてしまった。昨日の記事で行った引用は以下の掲示板からのもの。

6: lovelovedog 兵事主任という言葉ですが
1・この言葉を使っているのはどうも沖縄戦史家の安仁屋氏とその弟子・関係者でしかないこと
(通常は「兵事係」という言葉を使っているようです
2・兵事主任が「軍隊の命令を住民に知らせた例」が見当たらないこと

たとえば、この2つについて言及することは「歴史修正主義者」ということになりますか
兵事主任という言葉ですが - 歴史修正主義の定義について - 反歴史修正主義グループ

最初に見たときは上記記述を私の文章ではなくパラフレーズではないか、というようなことを書いていて、おお、この人は上記掲示板での議論をなかったことにするつもりなのか、といささかびっくりして(ある意味では予測通りに)読んだ訳だけれど(「見出しは演出」の断りも最初はなかった)、今見るとさすがに自分の書いた文章であることを思い出したようだ。

たとえば、とつけていてもこれは疑問を簡潔に要約したもの見なして私は引用した。これが自分の企図した表現ではないというなら撤回するが、自分でも認めるとおり「たとえば」として自分の意見とは異なる主張を示したものではないのでしょう?

この人は他人のパラフレーズを細かく指摘する割には自分に対する批判をパラフレーズすることには寛容だな、と思ったのは以下のフレーズ。

兵事主任」は「軍の命令を伝える重要な職務であった」のかどうかが知りたいだけなのですけどね。で、そのように重大な職務であった証拠が、どうもうまく見つからない、と言うと「歴史修正主義者」と言われる。
単純に - 歴史修正主義の定義について - 反歴史修正主義グループ

証拠が見つからない、とだけ述べたのではなく、そこから飛躍して、その主張は疑わしく、勘違いかミスディレクションだろう、と突っ込んだ判断を示したから叩かれたんだろうに。ほんと、演出やミスディレクションが好きな人だな。自分の文章のパラフレーズには文意がほとんど変わらなくても執拗にこだわるくせに、自分への批判はかなり歪んだ形にパラフレーズする、と。

記事タイトルを「演出」といっているのは、私の文章のどこが藁人形なのか指摘(しない)できないけれど、藁人形だと思わせるような「演出」をすれば、そういう印象を与えられる、というレトリックか? どこが藁人形なのか指摘しろ、という具体的議論を避けるための演出かね。浅ましい。

私の挙げた本は存在は知っていた、というけれど、この人は本の存在を知っていてなおかつ読んでいないにもかかわらず「いくつもの例を調べてみたのですが、「軍の命令」を「住民に伝え」た例がなかった、という「厳然とした事実の記録」にもとづいているのですが」と主張した。「まるでぼくがその本の存在を知らないかのような書かれぶり」なのではなく、この本の存在を無視したような書き方を問題にしたのであり、知らないかどうかは直接には関係がないことだ。まあ、確かに私は知らないのかと思って書いてはいたので、困らせたことは申し訳ない。ただ、無知なのではなく無視したわけで、墓穴掘ってるなあとは思うけど。


で、なぜこの人は掲示板でこの質問にきちんと答えてくれそうなnagaikazuさんに聞かないのか。nagaikazuさんは、掲示板できちんとこの人の疑問に答えてくれているというのに、その回答に何らのリアクションも示さず無視しているけど、何か都合が悪いのか。

60: nagaikazu 6 Re:兵事主任という言葉ですが

1・この言葉を使っているのはどうも沖縄戦史家の安仁屋氏とその弟子・関係者でしかないこと
(通常は「兵事係」という言葉を使っているようです
2・兵事主任が「軍隊の命令を住民に知らせた例」が見当たらないこと

はじめまして。lovelovedogさんのご質問に対する答えとはなりませんが、戦前の軍の制度については、私もいちおう専門家のはしくれですので、それに関連するlovelovedogさんの疑問については、お答えできると思います。

 まず、「兵事主任」という言葉は、戦前において使われていた言葉です。ですから、

この言葉を使っているのはどうも沖縄戦史家の安仁屋氏とその弟子・関係者でしかないこと

というのは、歴史的事実の認識としてはまちがっています。

 なお、戦前における「兵事主任」の使用事例をネットでも確認できることは、この掲示板でもni0615さんが紹介されていますので、私からあらためてお示しする必要はないと思います。

 次に、兵事主任とは市町村などの地方行政庁におかれた兵事係の主任のことですが、兵事係の重要な仕事は、陸軍大臣海軍大臣が定めた召集規則にある「召集事務担当者」の事実上の該当者として、(軍の召集命令を記した)召集令状を該当する住民に交付・伝達することですので、そもそもが「軍隊の命令を住民に知らせる」のがその職務です。ですので、兵事主任が「軍隊の命令を住民に知らせた例」は、戦前においていやというほど存在します。制度的にそうだったわけです。つまり、

兵事主任が「軍隊の命令を住民に知らせた例」が見当たらない

というのも、また歴史的事実についての臆断だというほかありません。
Re:兵事主任という言葉ですが - 歴史修正主義の定義について - 反歴史修正主義グループ

永井和さんは近代史の専門家のようなので、
永井和の日記 - 従軍慰安婦問題を論じる
http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/~knagai/
疑問に具体的な回答をしてくれると思いますよ。

そして以下の疑問は上記掲示板で提示したらどうか。

 まず、「軍隊」が「住民」に命令できるのか、という、命令系統がちゃんと存在しているのかは未確認でした。「住民」に命令できるのは「村長」もしくはそれに準じる者です。命令系統が違ってるんだから。で、その「連絡係(折衝係)」として、たとえば兵事主任が存在する、というのもありうることかもしれません(推論)。ただ、「折衝係」はどう判断しても「村民に命令する人」ではないのでは。

ま、こういう風に要約するとこの人の言っていることがどれだけおかしいか、この話題を知らない人にもよく分かるんじゃないかな。まさか、「軍隊」が「住民」に命令できるかどうか確認できない、などと言い出すとは。召集令状は命令じゃないんだ。じゃあ、赤紙が配られて戦争に行った人は、よくわからないお告げが来て、何か霊感を感じて自主的に兵隊に志願していったのかなあ。面白い人たちだ。

後半部分も、連絡、折衝役は「村民に命令する人」ではないのでは、と言っているが、兵事係自身が住民に命令を下すことは確かにできないかも知れない。兵事係が重要なのは、「軍の命令」を住民に伝えるからであって、兵事係自身が命令を出すわけではない。だから、自決問題では兵事係を介して住民に自決命令を出したか、という問いとなる。証言でも、兵事主任は「自決しろ、と軍から命令があった」という言い方をしている。

行政的な権力、直接的な武力を背景にした軍の言うことには、それが明確な命令の形であれ、訓示などであれ、口頭であれ、強制力を持つのであり、命令系統があるかどうかは問題にもならない。しかも実際に投降した者を処刑しているのだから、命令系統を問題にするのは全くの見当違いというしかなく、この直接武力を背景にした強制力があるかぎり、明確な「命令の有無」は問題の核心ではない。集団自決問題に対する右派の一点突破全面展開作戦は、文書記録など残りようのない「命令」の存在を焦点化させることで、その武力による強制を議論から外すことによって成り立っている。これは、南京事件に命令書があったかどうかを問題にする手法とまったく同一のものだ。


この人、あるいは歴史修正主義の主張の問題点は、合理的な推論を回避して、非常に狭いレンジでの事実問題だけを追及することで、問題の全体像を歪めるところにある。そして、厄介なところはこの種の「要出典」要請を繰り返すことで、問題に言及する難易度が異常に高くなってしまうところにある。

2008年03月28日 hazama-hazama-hazama 歴史修正主義的な論を展開するために払うコストの低さに比べて、それを批判する学術的議論を展開するたために払うコストが高すぎる。だから歴史修正主義は手強い。
はてなブックマーク - 歴史修正主義の手法 - 歴史学者の議論をその裏付けが自分の調べた範囲で見つけられなかったことを根拠に勘違いだろうと判断する人物 - Close to the Wall

如上の通り。あるいは以下。
http://d.hatena.ne.jp/hazama-hazama-hazama/20080329/1206773121


それに、勝つもなにも、この人は成立しない無茶な主張をしているだけで、最初っから間違ってるんだから、問題はいつ自滅するかどうかにしかない。この問題に関しては私はこの人はじめ、他の人に比べてあまりに少ない知識しかないし、nagaikazuさんのように専門的知識があるわけでもない。私は、この人の論理構成がどう間違っているのかを具体的に説明しただけだ。それにはあまり詳しい知識は必要ない。じっさい私はネットのテキスト以外では集団自決問題についての本というのは前掲の謝花氏の著書しか読んだことはない。だから、沖縄戦の全体像については私はよく知らない。

フクロにされたつもりになり、負けたつもりになっているとしたら、それは(間違いだと知りつつレトリックを弄して印象操作しようとした(かも知れない))自分自身に負けたのだ。

最初はなかった記述

「1」に関しては「でしかない」というのは言いすぎでしたね。反省します。ただ、「兵事主任」という言葉は安仁屋政昭氏が使いはじめる前から存在していたのか、それ以前にもその言葉は使われていたのか(存在していたのか)に関しては、何かもう少し調べるための材料が欲しい、と思いました。

nagaikazuさんに聞けば。

 ぼくは基本的に「お前らの間違った歴史観を修正してやるぜ」「これが若さか」なガチの人歴史修正主義者じゃなくて「なんか歴史について言っている人にもう少しくわしく聞きたいこととか知りたいことがある」という程度の、疑問を持つ人なので、沖縄戦に関してはまだまだ知識不足があることは否定できないのですが、まぁこのくらいは読んでおけ、という程度のものには目を通してみたつもりなのでした。

だからnagaikazuさんに聞けば。掲示板にせっかく出張ってくれているのに。

端的に言うとどちらの記述も歪曲。この人はこう書いている。

渡嘉敷島における戦場において、富山兵事主任は「軍の命令を住民に伝える重要な役割を負わされていた」」というような記述にはもう、「?」が50個ぐらいつきそうな疑問があるわけです。

ていうかそれ、はっきり言って安仁屋政昭さんの勘違いだろう、と思います。
「兵事主任」ってそんなに「重要な役割」なのか? - 愛・蔵太の気になるメモ(homines id quod volunt credunt)

調べる材料が欲しいとか、疑問を持つ程度ならともかく、専門家の主張を勘違いだろうと言う(あまつさえ悪質なミスディレクションの可能性を示唆する)のは修正主義的欲望に基づいた行きすぎた勝手な判断だと言われても仕方がない。推論の過程において、勘違いだと判断するに足る説得的な材料が提示されていれば、結論が同じだろうと歴史修正主義と呼ぶことは私はしない。この人は、推論過程においてあり得ない飛躍を用いており、なおかつその結論が修正主義的だから、私は歴史修正主義者と呼ぶだけのことだ。

というか、「歴史修正主義」には意味が無いはずじゃなかったかな。

51: lovelovedog 48 Re:つまり、定義(意味)は、何ですか。
意味なんてないんじゃないですかね。単なる悪口語・罵倒語ですから。「おまえの母ちゃんでべそ」「マザーファッカー」みたいなもので。

「おまえの母のヘソは出っ張っている」という程度の意味があるとしたら「歴史について少し変わったことを言ってみている人」でしょうか。
Re:つまり、定義(意味)は、何ですか。 - 歴史修正主義の定義について - 反歴史修正主義グループ

シラを切るなら切るで主張を一貫させてほしいものだ。


で、調べ方を知っているApemanさんは、サクッと具体的に
主語をあいまいにした読売新聞社説の欺瞞 - Apes! Not Monkeys! はてな別館
追記への追記 - Apes! Not Monkeys! はてな別館
安仁屋氏以前の兵事主任使用例を羅列している。いやあ、Apemanさん、これらの事例を知りつつかの人がどのような言い抜けをするのか観察していたとしたら人がわるい。まあ、具体的事例を出せ、という要求を無視して追及することで具体的事例がないので勘違いだろうと判断する思考のおかしさをあぶり出そうとしていたんじゃないかと思いますが。