菊田裕樹 - secret of mana+

聖剣伝説2 シークレット・オブ・マナ

聖剣伝説2 シークレット・オブ・マナ

未プレイゲームサントラその三。聖剣伝説で知られるコンポーザー菊田裕樹による聖剣伝説のアレンジアルバム、1993年リリース。ところでタイトルの「+」は何だろうか。日本語タイトルだと省略されてるし。

正確には私は聖剣伝説2はやっていないけれど、3だけはやったことがあるので未プレイゲームではない。3はリースでクリアしたなあ。名作だったと思う。とはいえ、音楽が思い出せない。聴けば思い出すと思うけれど。即座に思い出せるのはキャラ選択の時の軽快な奴か。

で、このアルバムはアレンジアルバムというか、一曲49:26秒のワントラックアルバムになっていて、聖剣伝説を素材にプログレ好きとおぼしき菊田裕樹が好き放題やったほとんどオリジナルアルバムのような代物。聴く前にアルバム構成で予想したとおり、1990年のMike Oldfieldによる一曲60分のワントラックアルバムAmarokのオマージュだろう。
AMAROK-REMASTERED

演奏も打ち込み等を多用し、牧歌的でアコースティックな雰囲気もありながら、モダンな要素やテクノ色も強く、そこも近年のマイクっぽい。アナログキーボードが大きくフィーチャーされているパートもあり、まさにごった煮。そして、キーボードを打鍵する音だとか、携帯(年代的にPHS?)の着信音、プッシュ音だとかの生活環境音をメロディとして用いたりするなど、ゲーム的ファンタジックな音作りと現代音楽的なアプローチが混在するあたり、いろんな意味でプログレッシブな作りになっている。まあ、そこら辺も含めてAmarok、というところか。

いやしかし、ゲームサントラの名を借りてここまでド級プログレをやってのけるとは凄い。プログレファン(またはSFファン*1)は聖剣伝説2のサントラの曲タイトルをみてニヤニヤすると良いと思うよ。


楽曲は冒頭、小鳥の囀りが聞こえ、危機(聖剣2の曲名ではなく、イエスの)が始まるのではないかと思わせるあたり、いきなりプログレファンの心を鷲掴み。そこからはシンセ(実際はサンプラーを使っているらしい)による荘厳な導入を挾んで、静かなヴィブラフォン。そしてアコギ、フルートによる物悲しいメロディ。ここらへん、確かにゲーム音楽的とも言える。チェロが良い感じ。徐々に楽器が増えていき、壮大になっていく展開が良い。

その後、リズミカルなベースラインが入ると、打鍵の音とボタンを押す電子音がバッキングに使われるモダンなパートに。ここのベースラインが入るあたりマイクっぽいなと思う。わりとダンスミュージックっぽいベースライン。10分台のベースのソロパートはなかなか格好いい、そして区切りでレジスターの音を入れてくるユーモア感が面白い(レジスターといえばフロイドの「Money」だ)。

キーボードソロを挾んで、10分台後半はギターが大きくフィーチャー。神経質な音色はやはりマイク風を意識してだろうか。それからいつのまにやらヴァイブとアコギとse(鳴き声?)による落ち着きながらも妙さが残る穏やかなパートへ。おもむろにシンセ、ピアノ、ベースが鳴りだし、マリンバがミステリアスな雰囲気を響かせはじめる。重いドラムが雰囲気を切り替え、22分後半での笛系の印象的なメロディ。マリンバ、ドラムによる不思議な雰囲気のパートが続き、今度は生活環境音がたくさん現れるパートへ。26分あたりの女性の囁き声をきっかけにして、打ち込みリズムトラックがリードするスピーディなパートへ展開。大きくフィーチャーされてる鍵盤打楽器の軽快な音色が好きだな。ここら辺はテクノを取り入れた現代型プログレとしても面白いんじゃないかと思う。というか、93年当時のプログレとしてはこれ、かなり斬新なのでは?

ラジオ放送らしきものが聞こえ、そのラジオからゲームのBGMがおそらくかなりオリジナルに近い形で聞こえてくる。聴いたことあるなと思ったら聖剣3のエンディングでも使われた聖剣2の「風の焉わるところ」らしい。40分あたりから、また生活環境音を区切りにして、何かの物音や携帯などのボタンを押す音をリズムに使ったかと思うと、Frost*ばりのダンスミュージック風(ディスコ?)アプローチが聞こえてくる。ここら辺の音は凄くFrost*を思い出す。

44分前後からは締めに入り、シンセが壮大な感じに響く。この終結部のメロディも良い。ラストは、小川のせせらぎと小鳥のさえずり。そして妙な効果音。

いやー、良いプログレでした。大山曜Asturias的な、ゲーム音楽を素材にしたプログレだ。ミステリアスで、トラッドなメロディ、アレンジ傾向も似たところあるかも(ディスコ調はさすがにないが)。聖剣の曲がどう使われてるかは私にはあまり実感できないので、聖剣ファンがどう思うかはよく分からないが、Amarok好き、プログレファンには薦めたいアルバムだ。ゲーム音楽の牧歌的でトラッドな部分、そしてキーボードプログレな部分をうまくプログレに取り込んだなあと感じる。ちょっとサントラの方も聴いてみる。

参考に、今作でもちょっと使われた聖剣2の人気曲「子午線の祀り

今作の作風とはやや異なるので注意。

作者菊田裕樹氏のブログより、このアルバムについての記事。
シークレット・オブ・マナ kiss twice/ウェブリブログ
音色としてはシンセは使っておらず、サンプラーを駆使しているらしい。

参照
http://www.h3.dion.ne.jp/~sd.popoi/mg.sound-jou.htm
http://www.h3.dion.ne.jp/~sd.popoi/mg.sound-ge.htm
なお、菊田氏がこのアルバムを作るのに使ったAtari STというマシンは、Mike Oldfieldが「Earth Moving」で使ったものと同じ機種らしい。
Atari ST - Wikipedia
まあ、あんまりマイクとだけ結びつけるのもどうかとおもうけれど。

*1:というか、菊田氏のレーベルの名前が「ノーストリリア」とか筋金過ぎる