今年は後藤明生論をずっとやっていて後藤ばかり読んでいたので、候補がそもそも少ない。とはいえわりとあったので、カテゴリごとに五冊程度ずつ挙げた。
日本文学
- 作者: 笙野頼子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/12/16
- メディア: Kindle版
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ひょうすべの約束、おばあちゃんのシラバス、人喰いの国、ひょうすべの菓子、ひょうすべの嫁
- 作者: 樺山三英
- 出版社/メーカー: 幻戯書房
- 発売日: 2016/05/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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行方不明になった戦後裏社会の首領(ドン)を捜索する探偵と、400年の時を経て現代に甦ったドン・キホーテとサンチョ・パンサの遍歴を交互に描き、現実と虚構、正気と狂気、書物からインターネットへ至るメディア環境、民主主義における「みんな」と「わたし」の問題を一挙に連繋させていきながら、『ドン・キホーテ』とともに生まれた民主主義の未来、つまり「ドン・キホーテの消息」をも幻視する、異様なる現代ハードボイルドSF小説。『ドン・キホーテ』とその研究史をも丹念に踏まえた叙述から、現代ネット社会や原発といったアクチュアルな話題へと繋げていく飛躍ぶりも鮮烈なきわめて挑戦的な傑作。(SF大賞エントリーに投稿した文章)
メロディ・リリック・アイドル・マジック (ダッシュエックス文庫)
- 作者: 石川博品,POO
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/07/22
- メディア: 文庫
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刊行された単著全部を追っている現役の作家二人のうちのもう一人石川博品のもっともポップでメジャー性のある作品。アイドルを題材にしているけれども、半分くらいパンクな雰囲気があり、野良アイドルが簇生する沖津区という街を舞台にした、反商業主義自家製アイドルを描いている。アイドル、というのは意外な方向から来たな、と思ったけれども、読んで見るとまさしく石川博品としか言いようのない、しかしこれまで以上にポップな作品になっていて、既に言われているようにとても入りやすい、そして石川作品としても相当上位という出来になっている。パンクな抵抗精神と、さまざまなネタを突っ込むコミカルかつ繊細な文体、女性キャラが総じて攻めのセリフを吐きまくったり、裏と表をキュートに描くヒロインの魅力などとともに、懸隔のある二人を描くラブコメの手法、親との関係など、これまでの石川作品にもあった要素がそれぞれバランス良く取り込まれた、非常にスマートな傑作だろう。アイドルとは選ばれることではなく自らを選びとることという力強い自己肯定への志向が刻まれた一作。一部から絶大な支持を受けつつも売り上げが振るわず続刊が出せないというなかなか苦しい位置にある作家さんなので、この文を読んだら買えよな。→短篇集
石川博品 - トラフィック・キングダム - Close to the Wall
- 作者: 小島信夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/11/10
- メディア: 文庫
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- 作者: 小山田浩子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/07/28
- メディア: 文庫
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東欧文学
- 作者: ボフミルフラバル,平野清美
- 出版社/メーカー: 松籟社
- 発売日: 2015/12/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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〈フラバルコレクション〉第三弾で、『剃髪式』の続篇とも言える、ペピンとフランツィンが出てくる一作。戦中から戦後へかけて、時代が変わって様変わりしてしまった町、失われた町へのレクイエムとしての一作。
- 作者: ゾフィアナウコフスカ,加藤有子
- 出版社/メーカー: 松籟社
- 発売日: 2016/01/09
- メディア: 単行本
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〈東欧の想像力〉第十二弾で、ナチスの犯罪調査委員会にいた作者による、世界最初期のホロコースト文学。証言者による証言を聞きとることを主軸とした証言文学で、その極限を体験した人びとは、その現実を耐えるために現実を切れ切れにせずにはいられなかった、という状況を描く。
- 作者: ナーダシュペーテル,早稲田みか,簗瀬さやか
- 出版社/メーカー: 松籟社
- 発売日: 2016/04/30
- メディア: 単行本
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戦後ハンガリーを少年の視点から描くことで、スパイなり政治なりの状況が不分明になっているありさまを描き出す長篇。あるいはキリストを信じられなかったシモンの末裔のユダヤ人としての来歴を継承する祖父とそれを裏切る父の存在にからむ、裏切り者の物語。
- 作者: トーマスベルンハルト,今井敦
- 出版社/メーカー: 松籟社
- 発売日: 2016/05/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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トーマス・ベルンハルトの自伝的五部作の一作で、 生まれた頃から、十三歳までの出来事、特に八歳頃のことを中心に、その頃の子供の視点から家族との関係、祖父との親密な交流、戦争とナチスが忍び寄る戦前を背景に描く作品となっている。子供の視点から語られる、子供たちの楽園、地獄の息苦しさ、人生の指針ともなる祖父への親愛が描かれた、自伝小説の佳品。
- 作者: ヨーゼフ・ロート,平田達治
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2014/07/17
- メディア: 文庫
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- 作者: 奥彩子,西成彦,沼野充義
- 出版社/メーカー: 松籟社
- 発売日: 2016/02/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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奥彩子、西成彦、沼野充義編 - 東欧の想像力 - Close to the Wall
朝鮮・引揚げ・移民
- 作者: 梶山季之
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/08/17
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- 作者: 上野英信
- 出版社/メーカー: 社会思想社
- 発売日: 1995/04
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北朝鮮へのエクソダス 「帰国事業」の影をたどる (朝日文庫)
- 作者: テッサ・モーリス・スズキ,田代泰子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/09/07
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「帰郷」の物語/「移動」の語り: 戦後日本におけるポストコロニアルの想像力
- 作者: 伊豫谷登士翁,平田由美
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2014/01/24
- メディア: 単行本
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- 作者: 渡邊一民
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/06/25
- メディア: 単行本
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- 作者: 加藤聖文
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/07/11
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J・G・バラード短篇全集と後藤明生コレクション1が未読。バラードは今年は読めないのがわかっていたけど、後藤コレクションも全篇既読だったので、他の後藤作品を優先してしまって読めていない。解説月報は楽しんだけれどさすがに読んだ本、ではないので挙げていない。