季刊「未来」の後藤明生論第四回「憧れと挫折」について


後藤論連載第四回の掲載された季刊「未来」2017年夏号が出ました。
今回から最終回までの三回にわたり『挾み撃ち』論が続くことになります。冒頭に書いたように、この作品は「夢」の小説だ、とぶち上げてみています。

今回はおおむね『挾み撃ち』の概要を確認したかたちですけれど、これまであまりちゃんと言及されていないところとしては、『挾み撃ち』はゴーゴリとともに、『墨東綺譚』をベースにしている、という点についてでしょうか。『挾み撃ち』の模倣対象としてはつねにゴーゴリばかり言及されて、荷風も重要な模倣対象だよと強調しておこうと。そして『壁の中』との関係を指摘してみましたけど、どうでしょうか。『墨東綺譚』についてはまた出てきます。

この関係についての言及としては、坪内祐三が坂本忠雄の座談集『文学の器』で、『挾み撃ち』を「現代版『墨東綺譚』みたいなところがある」と言っています。再読に耐える、という理由以外はいわないものの、別の文脈で『墨東綺譚』の都市小説性やジイドの後期作品を念頭に置いた批評的作品だとも言及していて*1、このあたりを踏まえてのことでしょう。

文学の器

文学の器

出典は挾み撃ちばかりでそれはおおむね頁数を併記してあるので、削った出典注は今回はなし。

*1:267-271P