ときどき女装するシングルパパが娘ふたりを育てながら考える家族、愛、性のことなど
- 作者:仙田 学
- 発売日: 2020/11/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
図書新聞2021年3月6日号に、仙田学『ときどき女装するシングルパパが娘ふたりを育てながら考える家族、愛、性のことなど』についての書評が掲載されています。早稲田文学新人賞出身の小説家による子育てエッセイですけれど、タイトル通りそれだけには留まらない一冊です。
冒頭に置いた「変身」という一語が浮かんだことで書けた原稿で、それはもちろん女装が大きな話題でもあるからですけど、デビュー作が収録された『盗まれた遺書』がそもそも変身小説集ともいえる一冊で、仙田学という小説家のエッセイとしてはここから読めるな、と一気に作品間の関連性が見えたんですね。なので子育てエッセイとしての側面とともに、小説家仙田学のイントロダクションにもなるように既刊著書と近作の単行本未収録作品を多く触れるようにしました。本文に盛り込めませんでしたけれど、怪作ライトノベル『ツルツルちゃん』も、他人の文章の書き換え、という「盗まれた遺書」と共通するモチーフを持っていたりして、変身すること・成り代わることの繋がりも見えてきます。
言及した「鬼門コンパ」はネットで読めます。鬼門コンパ – SF Prologue Wave
なお、この原稿を書いてる時に実写とアニメを融合させた作品、アイカツプラネットを見ていたことがちょいちょい影響を与えています。VRを通じた変身と自己表現としてのステージ、というアイカツプラネットの設計は書評タイトル「別のものへの「変身」の過程を通じて「存在の核」を示す」(私は原稿にタイトルをつけてなかったのでこれは編集さんが本文から取り出したものです)に引用された部分の発想に繋がっています。なお、仙田学にはそのものずばりの「アイドル」という小説があって、これもまた変身譚だったりします。「文藝」2019年夏季号。最新作は「文學界」2020年11月号の「剥きあう」でこれは本文にも書いたとおり、女装する夫を妻の視点から描いたものです。本書にも言及された「愛と愛と愛」は「文藝」2016年秋季号掲載。
芥川賞候補になったことがないみたいなんですけど、早稲田文学系の作家っていうのは倉数茂さん含めて、どうも候補になりづらい気配があるような、ないような……。