明日発売の図書新聞2020年2月5日号にミルチャ・カルタレスク『ノスタルジア』の書評が掲載されています。ルーマニアポストモダンの旗手ともいわれる作家の代表作ですけれど、これがなかなか手強くて、今までで一番書くのが難しかった書評な気がします。未だに掴めた気がしない。 pic.twitter.com/yRa1SpUVXi
— 東條慎生と海を墓地に送る (@inthewall81) 2022年1月28日
図書新聞2022年2月5日号にミルチャ・カルタレスク『ノスタルジア』の書評が掲載されています。これまでにエッセイや掌篇集が訳されている、ルーマニアポストモダンの旗手といわれる作家の代表作がいよいよ紹介されたわけですけどこれがなかなか手強い作品でした。全五篇が収録されている本書は改行も少なくページ一杯に文字が詰め込まれていて、思った以上に内容がぎっしり詰まってます。とはいっても、最初と最後に収められている短篇、ロシアンルーレットをいくらやっても決して死なない男を描いた奇妙な味の「ルーレット士」や、車のクラクションを演奏することに取り憑かれた男の荒唐無稽なSF法螺話の「建築士」などは面白いです。中核といえる二中篇は、SFやラテンアメリカ文学の技法を持ち込んだ幻想小説ともいえるものですけれども、これがなかなかどういう小説かというと難しい。書評ではその難しさをテコになんとか書いてみました。
本文ではミルキィ・イソベの装幀に触れましたけれども、再読して全五篇のすべてに蜘蛛や蜘蛛の巣への言及があることに気づいてちょっとぞくっとしましたね。
本を二周するだけで時間のほとんどを使ってしまったので、参考文献は以下の二冊くらいしかないのですけど、『ぼくらが女性を愛する理由』には、所収中篇「REM」のモデルになった女性についての話があったり、そもそも非常に読みやすい本なので、ここから入るのも良いと思います。
『ぼくらが女性を愛する理由』の記事も参照。
ミルチャ・カルタレスク - ぼくらが女性を愛する理由 - Close To The Wall