Pierre Moerlen's Gong - Full Circle live 1988

Full Circle: Live 1988

Full Circle: Live 1988

アリスタを離れたムーランズ・ゴングが「Breakthrough」をリリースし、そして「Second Wind」をレコーディングしようという時に行ったライブを収録したライブ盤。

Amazonでは入手不可だけれども、HMVならまだ買えるはず。
Full Circle: Live 1988 : Pierre Moerlen's Gong | HMV&BOOKS online - B-462427

これはかなり幸せになれるアルバム。ジャケはブートレグ以下の代物だけれど、内容はかなり良い。アリスタでのライブも良かったが、六十分近く収録され、ライブテイク初収録がほとんどを占めている今作も素晴らしい。ライブ当時まだレコーディングまえだった新曲がトップから三曲連続で演奏されていて、過去の代表曲だらけにはならない新作への意気込みが感じられる。

メンバーはピエール・ムーランと、弟ベノワ、ハンスフォード・ロウまではアリスタでのムーランズ・ゴングと同編成だが、トリビュート参加の縁でのトリビュートメンバー、Stefan Traubがヴィブラフォン、Ake Ziedenがギターで参加している。つまり、ツインヴァイブ編成になっている。

やはりムーランズ・ゴングはツインヴァイブではなくては。ペンタナインはヴァイブが一人だったせいか、鍵盤打楽器アレンジがどうにも物足りない感じがしていた。このアルバムでは、これぞムーランズ・ゴングという楽曲と演奏が楽しめる。いつものスタジオ版のようにやたらとゲストソリストを入れていないので、もっとも単純な編成でのパーカスフュージョンサウンドが楽しめるのがうれしい。

収録曲のスタジオ版を入手できていないので、そういう比較はできないが、このアルバムはいまでも手にはいるので、ムーランズ・ゴング好きはともかくも手に入れるべき一枚だろう。

私は聴いてるだけで幸せになれる。ヴィブラフォンはすばらしいなー。


イントロダクションが1トラック目に入ってるが、それはとばして、

2.Second Wind (6:32)
これはタイトル通り、後のアルバム「Second Wind」のタイトル曲。この時点ではまだレコーディングもされていない新曲だったという。いやあ、いきなりムーランズ・ゴングらしさ炸裂の名曲。冒頭からツインヴァイブの厚みのあるリフレインから始まり、期待は高まる。少しずつ表情を変えながらリフレインを続けるヴァイブのなかを、ギターがソロを取る。ソロの後では、キーボードらしき音も入る。続けて、ヴァイブソロとマリンバソロとが交互に入れ替わるのもムーランズ・ゴングならでは。クレジットには記載されていないが、明らかにキーボードの音がするのは、鍵盤打楽器奏者がキーボードを操作しているのか、あるいはMIDIギターみたいに、鍵盤打楽器でキーボードを鳴らすことができるような装置を使っているのかどちらかだろう。とにかく、ヴァイブ奏者が2人いるおかげで、演奏にも音色でも幅ができていて、とても充実した楽曲。

2.Deep End (4:48)
これも未レコーディングだった新曲。冒頭はシンセのような音がサーッと鳴っていて、全体のテンポも緩やかなニューエイジ的な演奏。やはりキーボード奏者がいるような感じがするな。中盤のソロはキーボードじゃないかな。後半のシンセとヴァイブで演奏されるメロディが珠玉の美しさ。ムーランズ・ゴングではあまり聴けない美しいメロディ主導の展開が新鮮。これも名曲だ。

3.Exotic (8:54)
これも未レコーディングだった曲。しかし、これもすばらしい。始まってからしばらくして現れる早いパッセージで印象的なメインテーマを反復するところでのマリンバとヴァイブの競演はいきなり心を奪われる。その後ソロ回しになり、ヴァイブのリバーブを効かせたソロやマリンバの軽快なフレーズが気持ちよい。中盤でまたしてもメインテーマ。今度は一人で演奏。すぐにもうひとりも参加してツイン鍵盤打楽器でのユニゾン。その後少し曲調が代わり、南国風のパーカスとギターソロがフィーチャーされる。あれ、このアルバムでここではじめてギターソロか? まあ、これくらいのバランスがムーランズ・ゴングにはイイ。そのままギターがリードしつつ、ヴァイブが空気感を醸し出すバッキングになる。その後またしてもメインテーマ。そのままヴァイブソロへ。ここら辺の入れ違いにいろんな音色で鍵盤打楽器のソロが続くのだけれど、ここでMIDIヴァイブみたいなものを駆使してるのか、ヴァイブとマリンバ以外の音色が聴ける。後述のリンクではmallet synthesizerを使っていると書かれている。面白いものもあったもんだ。

4.Leave It Open (10:00)
アリスタ期ラストアルバムからタイトル曲。17分の大曲がよりコンパクトにアレンジされている。ベースが動きまくるイントロでの鍵盤打楽器とギターによる瞑想的なリフレインが印象的なミステリアスな一曲。中間部ではベースソロもあり、なかなか面白い。浸って聴いていると案外早く終わってしまう感じすらある。

5.Drum Alone (6:08)
前曲からシームレスにつながる、ピエールによるドラムソロ。ムーランズ・ゴングのアルバムには高確率でドラムソロが入っている。ペンタナインにはドラムソロが足りなかった。

6.Soli (9:22)
どうもライブの定番らしき代表曲。「Expresso2」より。いままで発表されたどのバージョンより長い。基本的にタイトル通りソロ回しメインなんだけど、鍵盤打楽器のソロが堪能できる。ベースもギターもソロを取っている。

7.Breake Through (6:55)
これは同名アルバムから。ミニマムミュージック風のイントロが印象的な滑り出し。リバーブを効かせたヴァイブがリードしていく。中盤での2人の鍵盤打楽器奏者による凝ったアレンジのコンビネーションが良い。後半のギターと絡むところもかなりいい。鍵盤打楽器を大きくフィーチャーした凝ったアレンジが秀逸な聴き所満載の曲。

8.Xstasea (6:08)
「Downwind」から。瞑想的な曲調でラストを締めるにふさわしい。中盤はなかなかヘヴィーなギターが入ってきて静かなだけではない。終盤はギターがリードしていく。

とにかく、鍵盤打楽器を大きくフィーチャーしたアレンジが聴き所で、やっぱりペンタナインは物足りなかったという思いを強くした。

特に、このアルバムは今現在流通していないふたつのアルバムからの曲が半分以上を占めていて、その意味でも貴重。その未入手アルバムからの曲が名曲ばかりで、いやが応にもそれらのアルバムが聴きたくなってくる。

しかし、このアルバムのジャケットはひどい。表ジャケが中高の文化祭レベルなのはまだイイとしても、裏面なんかどういうわけか孫コピーみたいに文字がぼけてしまっていてほとんど読めない。手作り感あふれる悲惨な出来。私が持っているのはMusea盤なのだけれど、なんとかならなかったのだろうか。店頭で手にとっても買う気にさせられない。そもそも、裏面を見ても詳細が読めない。非常にもったいないジャケットになっている。

以下のサイトも参考。ブックレットにも書いていない、mallet synthesizerを使っているという情報はどこから得たのだろうか。
http://gongzillafan.gozaru.jp/fullhargest.htm