Ray Wilson - The Next Best Thing

Next Best Thing

Next Best Thing

ずいぶん間が空いてしまったけれど、前回の続き、今回はレイ・ウィルソンのセカンドソロアルバム、2004年リリース。

レイ・ウィルソンは元々Stiltskinというバンドをやっていて、シングルヒットを出したりしていたことは前回書いた。その後ジェネシスに加入し、アルバムとツアーで脱退になる。その後、プロジェクト的にアルバム一枚出した後にソロ活動を行っていて、今作はその二枚目のスタジオアルバムとなる。詳しい経歴とディスコグラフィは英語版Wikipediaが詳しい(スコーピオンズのアルバムに一曲参加しているのが意外)。
Ray Wilson (musician) - Wikipedia
日本ではジェネシスのヴォーカルとして以外の知名度がないに等しい印象のレイ・ウィルソン。しかし、声は良いし、曲もなかなか良い。人に首根っこ捕まえて聞かせたくなるほど良いとはいわないけれど、UKロック好きにはそこそこアピールするとは思う。

基本的にはオアシスとかの90年代ブリティッシュロックにグランジ風味が加わった感じで、いかにもスタンダードなロックサウンドという印象。ただそれだけではなく、トランペットが入ったり少しブルージーな感触もあり、またピアノなどのアコースティックな音で、声の魅力を主眼におく楽曲もあって、ロック一辺倒というわけではなく、バランスの感じられる作品だ。

で、やはり彼の武器はその声だ。枯れ気味だけれど、最近のドン・ヘンリーほどクセはなく、ブライアン・アダムスほどしゃがれてはいず、ジョン・ウェットンほど男臭くはなく、歌い方がちょっとニール・モーズっぽいところもあったりして、これがなかなか良い声なんだ。ちょっと沁みる感じのバラードがひどく似合う。もちろんハードなロックにも良い。

私としてはシンガーとしての彼の声を聴ければ良いくらいでこれを聴いたのだけれど、その期待には十分以上に応えている。
以下トラックリスト。

1. These Are the Changes
2. Inside
3. How High
4. Fool in Me
5. Adolescent Breakdown
6. Sometimes
7. Alone
8. Magic Train
9. Actor
10. Ever the Reason
11. Pumpkinhead
12. Next Best Thing

1はおそらく911当時のニュースの音声(New York city became battlefieldとか聞こえる)をSEとして用いて、淡々としたメロディを反復するメッセージ性の強い曲。changeがソロ作品での一貫したテーマみたいだ。シングルカットされており、以下プロモ。

2はStiltskinでUKナンバーワンヒットとなったシングルのセルフカバー。オリジナルにあった長いインストをばっさりカットしたのは正解だろう。アレンジにさして違いはないと思うけれど、こちらの方が良いかな。
4はヘヴィなハードロック的な演奏だけれど、間奏部分でトランペットが切り込んでくるところがとても面白い。
56そして7とややアコースティックな曲調でしんみりいった後(7のムード歌謡みたいなイントロ!)、8の静と動の切り返しにはっとさせられる。なかなかの名曲。ここから9.10の三曲は後半のハイライトだな。8はアコースティックとバンドサウンドとの対比が印象的で、中盤でのハーモニカが良い味を出している。9もまたアコースティックイントロから始まって、シンセのバッキングが面白いバンドサウンドに展開する。そしてまた静かなパートへ戻ってエンディング。10は派手な展開はなく雰囲気重視の曲だけれど、時折はいる女性コーラスピアノとギターのバッキングがなかなか良い。
11は軽快なギターの躍動感が心地よい。やはりここでも歌詞にchangeが現れる。
12はインスト。トランペットが印象的。後半はキーボード主体。ピアノとかの音がメインで、なかなか爽やかな印象がある。

以下の映像はともにアコースティックツアーからのもの。
Ray Wilson - "Alone" Live acoustic 2005

Ray Wilson - "Ever the reason" Live acoustic 2005

実はジェネシスのラストアルバムより歌の出来はいいんじゃないか。結構充実したアルバム。間違ってもプログレではない。この人、たぶん下地にブルースがある人なんじゃないかな。トランペットとかハーモニカとか、そういう感触がある。

ネットを検索しても、日本のページにはレイ・ウィルソンの情報ってほとんどない。そこらのプログレマイナーバンドよりはるかに情報がない。たぶん国内盤すらない。音楽性がどんなもんか全然分からなかったので、アルバムを買うのはちょっと冒険だったのだけれど、結構お気に入りだ。

しかし、ソロのファーストが手に入らない。hmvで注文してもまったく入荷しないし。
下記はレイ・ウィルソン公式サイト
http://www.raywilson.net/2006/rwsl/rwsl/
音楽、映像の試聴がかなり豊富だ。ここにはスコーピオンズベルリンフィルをバックにライブをやったときに共演した「the Big City Nights」の映像も見ることができる。
http://www.raywilson.net/2006/video/wmv/bigcity.wmv
Youtube

ここでのレイはマイクの音量のせいもあるだろうけれど、声が他の音に負けている。その点、スコーピオンズのヴォーカルの張りのあるハイトーンはさすがに良く聞こえている。私はハードロックのハイトーンヴォーカルがあまり好きではないけれど、これを聴くと、楽器に負けない通りの良いヴォーカルとして、ハイトーンの声が求められたのかと思わせる。