![文藝 2009年 05月号 [雑誌] 文藝 2009年 05月号 [雑誌]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51BWAFLTLQL._SL160_.jpg)
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- 発売日: 2009/04/07
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というわけで後篇です。といっても予定されていた第9章が単行本にお預けとなっているせいか、終わった感じがしないので、どうにも感想も書きづらい。
基本的にはここでは、歴史の裏側の出来事、つまり表からは見えなくされたことの「実状」を御三神との関わりにおいて読み替えていく作業が行われているのだろう。ただ、ここら辺は実際の民俗伝承などをネタ(河童、七福神等)にしているのだけれど、民間信仰、民俗などはわたしはよく知らないものが多いので、あまりピンとこなかった。
というか前篇の感想と、ここのPanzaさんの記事
笙野頼子ばかりどっと読む
に加えて何か書くことがあまりない。というわけで雑多な感想をざっと書く。
ひとつ。「いろはにブロガーズ」としていろは音に対応する「三姉妹」と名の付くブログを延々と羅列する「母の発達」でもやっていた力業の羅列芸は今作でもやっぱり冴えていて、ただ馬鹿にしたり茶化したりするだけではなく、どこか奇妙なユーモアがあって非常に面白い。こういう羅列芸って投げ槍になったりしそうだけれど、むしろテンションが上がって行く。笙野はやっぱり奇妙なものをでっち上げる才能があると思う。
ひとつ。末尾の方の身辺雑記的に巻き込まれた事件について書いていくところの文章の方に緊張感がみなぎっているように感じる。猫ドラ(ドーラのことか)の調子が悪くなり、そのリカバーに駆け回るけれど、どうも変な行動が目立ち、これはどうやら癲癇などではなく痴呆なのではないかと医者にいわれる。そうして猫の死期を覚悟している状態にあって、笙野は、
目が舞う程、幸福、ざまーみろ、幸福だ。
と太字で書き付ける。このくだりはまさに笙野頼子にしか書けない一文じゃないだろうか。悲しい程の迫力がある。
ひとつ。今作にもどっと読むのPanzaさんのことが出てくる。そして、新年にPanzaさんが旦那さんを亡くした記事に凄い書き込みをしていた人をぶっ叩いている。その記事のコメントを見たとき、あまりのひどさにどうしようかとも思ったけれど、話が通じないだろうなと思って多少の遠回しな揶揄を込めつつも、穏当なコメントをしたんだけれど、その後も続く荒しじみた書き込みにはThornさんが正面から応答していて偉業。その応答がまたアレだったけれど、真面目に説得していたThornさんお疲れ様です。そしてビックリしたことには、「だいにっほん」連作に出てくる「埴輪いぶき」という登場人物が「どっと読む」管理人のために作ったキャラクターだということが明かされている。いまちょうど「どっと読む」は「ろんちく」を読んでいていぶきのことも良く言及されていたので驚いた。すでに笙野頼子作品の重要登場人物となりつつありますね。
しかし、八幡ものあたりからまた引き離され始めた感じだ。こういうときは参考文献を読むとがっと分かるようになったりするから、チェックしなければならないか。フォイエルバッハとか民俗関係がヒントかなあ。
以下今作で挙げられている参考文献

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