- 作者: 井上道義=東京交響楽団
- 発売日: 1991/12/25
- メディア: CD
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このアルバムと言うよりは「ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ」がすごい。伊福部関連のページとかを見ていると、よく名前の出てくる曲で気になっていたのだけど、私が最初に聞いたのはナクソスの日本作曲家選輯のものだった。
このナクソスのシリーズ、私は伊福部曲が入っているものしか聴いていないけれど、ほとんど例外的に伊福部盤の評判が悪く、素人耳に聞いてもタプカーラなどに今ひとつ迫力がなかった(遅い)。それでリトミカ・オスティナータも聞いたのだけれど、なにやら面白い曲だとは思ったものの、いまひとつというか何とももどかしい感じがしてならなかった。
ためしに検索してみたらニコ動に別演奏が上げられていた。これを聞いてみたのだけど、これがビックリするほど別物で驚愕した。
去年亡くなった若杉弘指揮によるもので、この曲の演奏としてはベストと言われているものだという。
- アーティスト: 読売日本交響楽団,小山清茂,外山雄三,伊福部昭,手塚幸紀,若杉弘,小林仁
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 1995/09/21
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確かに、これは凄まじい曲だ。管の導入に続いて最初穏やかに入ってくるピアノのフレーズがすぐにどんどん加速していき、日本の短歌、俳句の五七調にならって、五拍子と七拍子の入れ替わりで構成された変拍子を交えたトリッキーなリフレインで延々と進行していく緊張感に満ち満ちた展開となっている。日本狂詩曲の日本的メロディと炸裂するリズムや、タプカーラの力強くまた土俗的な雰囲気とも異なり、情緒を排したようなテクニカルな雰囲気すらある。いや、タプカーラは似てると言えば似てるか。
メロディは人懐っこさがなく、硬質でパーカッシブなピアノの音色を引き立てるように、旋律として壊れるギリギリのところを突いている感じがする。そして押し寄せるオケとピアノのアンサンブルによる分厚い高速変拍子の嵐には、どうしたって盛り上がらざるを得ない。
執拗に反復する律動的な音楽というタイトル通り、反復とズレがどんどん盛り上がってくる構成になっている。だからか、聴けば聴くほど嵌ってきて、20分を超える曲だけれど、気に入った五分間ポップスよりも繰り返し聞いている。
自分が知る伊福部曲のなかでも、タプカーラ、日本狂詩曲と並んで好きな曲になった。
これはまさにプログレリスナーに聴いて欲しい一曲だ。ロックではないものの、プログレ好きなら確実に飛び起きる圧倒的なプログレ濃度を持っている。個人的に、ディシプリンクリムゾンに近いものを感じる。
特に、ラストのラスト、怒濤の盛り上がりの最中にアンサンブルが一糸乱れず停止し、一瞬の無音が現れる瞬間はこの曲のまさに頂点だろう。そこからより混沌と化したポリリズムの嵐が吹き荒れる締めはすごい。
- アーティスト: ロシア・フィルハーモニー管弦楽団,伊福部昭,ドミトリ・ヤブロンスキー,エカテリーナ・サランツェヴァ
- 出版社/メーカー: Naxos
- 発売日: 2004/12/01
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安価で代表作が収録されている選曲の秀逸さはここに来て徒になっている。ナクソスの伊福部盤は別の演奏をひとつ聴いてみたい、というひとには良いかも知れないけれど、これで伊福部を聞いてみよう、という人には絶対にお勧めできない。ついでに、ナクソスの「日本管弦楽名曲集」に入っている「日本狂詩曲」も遅い。他は悪い気はしなかったけれど。
しかし、若杉指揮盤は入手不可なので、私はもうひとつ割に評判のよい井上道義指揮のものを中古で安価に見つけたので買ってみた。
若杉指揮のものは実はライブではなく、二日間に渡るセッション録音らしいのだけれど、井上版はこの記事タイトル通り、協奏曲をまとめてライブ演奏したものから収録したもの。
さすがにセッション録音には完成度の点でかなわないものの、ライブの熱気が感じられ、ピアノのミスタッチもそりゃあしょうがないと思わせるところがあって、これはこれで非常によい。テンポ、速度も問題ない。井上版、若杉版があればこれを薦めたい。
気ままな生活 伊福部昭 『協奏三題』 より ~ ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ
こちらは複数のリトミカ・オスティナータ聞き比べ記事。最近のピアニストの作品集に収録されているものは私も聴いたことがない。余裕があればそのうち聞いてみたいと思っているけれど。
- アーティスト: 山田令子(ピアノ)
- 出版社/メーカー: ゼール音楽事務所
- 発売日: 2008/12/01
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余談
Genius Party&Genius Party Beyond O.S.T.
- アーティスト: サントラ,ひばり児童合唱団,ドミトリ・ヤブロンスキー,弦一徹ストリングス
- 出版社/メーカー: JVCエンタテインメント
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http://www.genius-party.jp/beyond/index.html
ジーニアス・パーティ - Wikipedia
Amazonの曲目検索で見つけたのだけど、「Genius Party」という短篇アニメ競作映画の続篇、「Genius Party Beyond」の一作、前田真宏監督の「GALA」というアニメで、リトミカ・オスティナータが劇伴として使われている。しかし、残念ながらここで使われているのはナクソス版のドミトリ・ヤブロンスキー指揮のもの。
どういう使い方してるのか気になって、ちょっと探してみたら動画サイトにあったので見てみたけれど、結構面白い。半分くらいリトミカのPVとして構成されたような内容で、一見の価値はあるかと。曲の方はかなり自由に編集していて、一部勝手に音を加えているところもある(ラストの拍子を合わせるのに苦心しているのが分かる)ので、知ってる身とすると違和感は拭えないものの、緊張感と盛り上がりを演出する役目は果たしていると思う。しかし、劇中では和楽器が出てくるけど、リトミカに和楽器はないんだよなあ。この映像に合わせるなら日本版はテンポが速すぎるので、ナクソス盤を使ったのはあえての選択なのだろう。
そういえば、この監督はアニメ「巌窟王」で音楽担当にThe Stranglersのジャン=ジャック・バーネルを呼んだりしてた。
*1:画像はこちらから ASIN:B00005F00O