- アーティスト: Mostly Autumn
- 出版社/メーカー: Cyclops
- 発売日: 1999/07/19
- メディア: CD
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男女ツインヴォーカルにツインギター、それにバイオリン、ホイッスルを交えた八人編成にゲストミュージシャンを加えた大所帯のバンドで、イギリスではかなりの人気がある若手バンドということらしい。個人的にはケルティックプログレの最高峰、アイオナには及ばないものの、なかなかのバンドだとは思う。まあ、アイオナはケルティックプログレがどうこうというより、現代プログレ全体でもトップバンドだと私は思っているので、そうおいそれと及ぶバンドがあろうはずもないのだが。
音はしかし、どこか全体的にアマチュア的な感じがする。アイオナのように現代的に洗練されたというよりは、メインヴォーカルである男性の声質もあいまって、非常に田舎くさいところがある。それが魅力といえば言えるが、そこらへんがどこかB級な感じではある。何かもう一つ物足りないところがあって、良い感じに一皮むければかなりのバンドになれるような気がする。
男女ツインヴォーカルとはいっても、このアルバムではほとんどが男がリードで、女性はコーラスがメイン。まだまだ多人数編成でのバンドの魅力を出し切れていない憾みがある。ただ、後のアルバムでは女性ヴォーカルの活躍の場が増えていくらしいのでそこは期待してみる。
結構曲ごとに音が違い、基本的にはギターを中心としたプログレで、ミドルテンポの空気感を重視した音作り。そこらへんがフロイドの影響が強いところだろう。
一曲目は歌メロがなかなかよい佳曲。オープニングとしては良い感じだ。
二曲目はアルペジオを響かせるギターのイントロが印象深いが、歌メロが前曲とかぶってる感じがあるので、ちょっとメリハリに欠ける。
三曲目はよりテンポを落として効果音的な鳥の声が入ってくる。昼間部ではバイオリンのソロがトラッド色を強く印象づける。SE的なギターがいかにもフロイド。
四曲目はこのバンドの代表曲、「Heroes Never Die」。ライブで頻繁に演奏されるようで、ベストアルバムのタイトルにもなっている名曲。これは本作のベストトラック。最初は静かに始まり、淡々と歌が続いていくが、リズム隊が入って歌われるサビがなかなか良い。二回目のサビに入ると演奏も盛り上がりドラマティックに展開していく。歌が終わった後の長尺の深いエコーのかかったギターソロが聞き所だ。この曲はProgarchivesから試聴できます。
五曲目は前半のロック系楽曲とはうってかわってもろトラッドなインスト。ドラムなどリズム隊が入っているが、基本はバイオリンの活躍するジグとかリールとか呼ばれるトラッドそのもの。こういう曲はみんなどこかで聴いたことがあるだろうと思うので、初めて聴いた気がしないと思う。中盤からはエレクトリックギターも参加してもっとにぎやかになる。朝の快活なイメージが浮かぶ佳曲。
六曲目はホイッスルの音色が印象的なミドルテンポのヴォーカル曲。前半の曲にくらべてより素朴な良さが出ているような気がする。後半はどこか暗めのバイオリンのソロでフェードアウト。
七曲目はまたもやトラッド。フルートかホイッスルか笛の音と、アフリカンな太鼓の音が絡むトラッド色が強い曲。リズム隊が入るとそれにバイオリンもアンサンブルに加わりノリの良いトラッドロックに変貌。なかなか良いアレンジ。
八曲目は初めて女性ヴォーカルがリードするバラード。
九曲目は、よくわからんオヤジたちの会話がユーモラスなイントロのトラッド。フルートとバイオリンによるメロディが奏でられた後、リズム隊とギターが入りロック色が強くなる。前半は歌物のブリティッシュロック然とした曲が良かったが、後半ではロック調のトラッドが非常に良いスパイスになっている。
十曲目は十分オーバーの大曲。歌の一段落した中盤からバイオリンが入ってくるまでちょっと退屈かな。後半はよく言われるようにデイヴ・ギルモア的なロングトーンのギターソロ。ギターがフェードアウトしていき、風の音だけが聞こえる。エンディングはなかなか見事ではある。
なかなかにユニークで聞き所も多いアルバムだが、ブリティッシュロック的な曲と、トラッド的な曲が、まだ分離している(というか、アルバムの前半と後半でカラーを変えている。)感があり、これをしっかりと融合したら面白そうという印象だ。ポテンシャルはあると思う。ケルティックプログレではまずはアイオナをお勧めするけれど、次にこのバンドを聴いてみるのも良いんではないか。私はまだこのバンドは初期二作しか聴いていないので、後期のハードエッジ路線がどうなってるのかわからないので、追々聴くつもり。