読もう読もうと買ってはあるが未だに積んでる世界十大小説

さて、十大小説がちょっとした話題になっているようで、調子に乗って自分も参加しようと思ったけれど、世界の大小説(?)を十もリストアップできないことに気づき、自分の読書傾向に重大な不安を抱くことに。

というか、古典をきちんと読んでいないことが判明し、こりゃいかんなということで、自分の恥を晒しつつ、読むモチベーションを高めていこうと思う。だから、ここはちょっと絞って、買ったはいいが本棚の肥やしとしていい感じに埃をかぶっている本、それも世界的に有名でなおかつ長大な作品(世界の大小説!)という条件を付けてみる。やはり長いのと古典という重量感が手を出すタイミングを失わせていくところがあって、ちょっときっかけでもないと読み出すことなんてなさそう。
でも、読んだらきっと面白い作品だろう、というものを中心に選んでみた。

1.プルースト失われた時を求めて

失われた時を求めて〈1〉第一篇 スワン家の方へ〈1〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

失われた時を求めて〈1〉第一篇 スワン家の方へ〈1〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)

世界三大小説を選ぶなら確実に食い込んでくるだろう、長すぎる大作。これ実は二巻までは読んだ。それまでだけでも凄く面白いんだけれど、落ち着いて読める時間が必要な作品でもある。長回しの文章をじっくりと読んでいくと、だんだんその文章、世界に引き込まれていくかのような愉楽を味わえる。これは是非最後まで読み通したい。いろいろ印象的な場面はあるけれど、「カトレア」という花が非常にエロいワードとして俺脳に登録されたので困る。
そして、これはハードカバー版を七冊くらい集めた(千円以下で買えたので)ところで文庫が出始めてしまったので、被って所有している。ハードカバー、邪魔……。


2.小島信夫 「別れる理由」

別れる理由 (1)

別れる理由 (1)

十数年群像に休まず掲載され続けた昭和の奇書。昭和文学の三大奇書を選ぶならたぶん入ると思う。ある教授曰く、読まれない大作のひとつ(他は、中野重治「甲乙丙丁」と後藤明生「壁の中」らしい)。元々は連作短篇(だったか)だったのが、ずるずると長引いていって、しまいには原稿用紙四千枚に及ぶ異常な長さとなった作品成立の経緯もさることながら、柄谷行人などが実名で登場したり、夢の場面が延々と続いたり、主人公がなんと作者小島信夫に電話を掛けてくるなど、破天荒なメタフィクション的手法まで飛び出してくるという。小島信夫は是非全作読んでおきたいのだけれど、これにはなかなか手が出ない。
また、これは一度古書店で全三巻の内二冊を入手した後、三巻揃いで三千円とかで売っていたのを見たときにまたそれも買ってしまったので、一巻と三巻が二冊ずつあって、これも、邪魔……。箱入りででかいんだ。


3.大西巨人 「神聖喜劇

神聖喜劇〈第1巻〉 (光文社文庫)

神聖喜劇〈第1巻〉 (光文社文庫)

超人的な記憶力を持つ主人公が、日本軍の不条理な命令などに対して、軍の規則などを利用して、徹底的に遵法闘争を仕掛け、日本軍、ひいては日本を痛烈に批判していくんじゃないかな、という小説。一巻をぽつぽつ拾い読みした感じ、たぶんそんなんだと思う。で、拾い読みしただけでも凄く面白い。文章はとても硬派だけれど、非常にエンターテイメント精神あふれる小説だと思う。是非最後まで読んでみたい。


4.ラブレー 「ガルガンチュワとパンタグリュエル」

ガルガンチュア―ガルガンチュアとパンタグリュエル〈1〉 (ちくま文庫)

ガルガンチュア―ガルガンチュアとパンタグリュエル〈1〉 (ちくま文庫)

バフチンの「ドストエフスキー詩学」を読んで、これは是非読まないとと思っているけれど、岩波文庫版は一巻と四巻、五巻しか持っておらず、新訳版はまだ三巻までしか出ていない。両方合わせれば全部読めるかも知れないが、新訳待ち(しているうちに多分積んでしまう)


5.ドストエフスキー 「カラマーゾフの兄弟

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

カラマーゾフの兄弟〈上〉 (新潮文庫)

これは恥ずかしい。読んでないんですよね、これ。「罪と罰」は好きなんで、これも是非読んでおきたい。ただ、私はドストエフスキーの悲劇が過剰になって喜劇になっちゃうところがとても好きで、「罪と罰」のマルメラードフの泥酔とか、ああいうのが読みたくて、途中で中篇や初期作品の方に関心が向いてしまって後期長篇はまだ半分しか読んでいない。「地下室の手記」「白夜」「二重人格」「賭博者」とかが好きだ。新訳が出て、新潮文庫も改版されたが、私の持っているのは旧版のもの。なにか損した気分。


6.スターン 「トリストラム・シャンディ」

トリストラム・シャンディ 上 (岩波文庫 赤 212-1)

トリストラム・シャンディ 上 (岩波文庫 赤 212-1)

つい最近重版されて、やっと全三巻そろえられたので、そろそろ読み始めないとな、なんて。漱石も紹介した変な小説で、まず自分の両親に、私を仕込むときにもっと配慮してくれたらな、と文句を垂れることから始まる。笑える。これもリストの定番的作品だなあ。


7.リョサ 「世界終末戦争」

世界終末戦争 (新潮・現代世界の文学)

世界終末戦争 (新潮・現代世界の文学)

「緑の家」に圧倒されて、リョサを他のも読んでみようといくつか買ったけれど積んでいる、ラテンアメリカ水滸伝と評される超大作。二段組み700ページ超のヴォリューム。かなりエンターテイメント的で楽しそうだ。タイトルが格好いい。ただ、この人はホモソーシャルな匂いがあるので、趣味が別れそうだ。それと、これよりは「パンタレオン大尉と女たち」か「フリアとシナリオライター」とかのメタ的なコメディ系の方が面白そうなんだよなあ。両方積んでいるけれど。


8.メルヴィル 「白鯨」

メルヴィルは、短篇の時点でもかなり文章が濃くて読むのに疲れた覚えがあって、この大長編を読み切れるか不安になって手を出していない。果たしてこの小説は楽しく読めるのか。


9.ゴーゴリ 「死せる魂」

死せる魂 上 (岩波文庫 赤 605-4)

死せる魂 上 (岩波文庫 赤 605-4)

これの第二部の原稿を暖炉に投げ込んで憤死したという壮絶な最期を遂げたゴーゴリの長篇。やはり後藤明生読者としては、ゴーゴリはきちんと読んでおきたい。しかし、かなり古い全集でもなければゴーゴリの作品をまとめて読めないという状況はどうにかならないのだろうか(特に「アラベスキ」、「ミルゴロド」)。「外套」と「鼻」と「検察官」あといくつかの短篇ばかり。もちろんそれらが名作だからなんだけれども。この長篇はゴーゴリの畢生の大作にして集大成とのこと。


10.フローベール「ボヴァリイ夫人」

物珍しくて講談社版の世界文学全集で中村光夫が訳している奴を古書で手に入れて、それっきり(蓮實重彦が訳した短篇が併収されている)。渡邊さんも勧めているので、これを機に読んでみたい。

と、こんな感じで。リストは上から、長そうな順で並べてみた。版がそれぞれ違うので、だいたいの感じを基準にした。いきなり小島信夫で趣旨がずれた気がするが、気にしない。
以下、次点。上のと比べると微妙にマイナー気味のものとか。

ブルガーコフ 「巨匠とマルガリータ
ゴンチャロフ 「オブローモフ
セリーヌ 「北」
ペレック 「人生 使用法」
安部公房 「お化けが街にやってきた」
武田泰淳 「森と湖のまつり
埴谷雄高 「死霊」

知らない人が多いんじゃないかと思う安部公房のはラジオドラマの脚本。新しい全集にしか収録されていない。しかも、どでかい全集二冊を占めるかなり長い代物。公房はテレビドラマやラジオドラマの脚本も多数手がけていて、ぽつぽつ読むとそれらも結構面白くて、あれ、こんなのをテレビでやってたのか、などと当時のテレビに感心したりもする。脚本なので、番外。

さらに番外。
「新世界訳 聖書」
ただでくれるって言うから!