SHOW BY ROCK!! STARS!! ましゅまいれっしゅのキネマシトラス制作だけど監督や構成は無印のスタッフになっており、ノリもそちらに寄せられていて、その分ましゅまいれっしゅの良さがだいぶ減じているところがある。プラズマジカとましゅまいれっしゅメンバーが出会うオールスターアニメの楽しさがあり、ましゅまいれっしゅの田沢大典が脚本担当した回などはその面白さがあるので、まあまあ好き嫌いが分かれるところはあるけど、ほわんたちが出てくるだけで加点だとは思った。盗み食いした蟹にカニカマ詰めるましゅまいれっしゅの面々は見たくなかったといえばそれはそう……。最終話でましゅまいれっしゅの新曲に全ヴォーカルが繋がってくるところは良かった。このアニメそのものみたいで。
親が蒸発して地方都市の団地で一人で暮らしている趣味もない高校生の少女がカブというバイクと出会い世界を広げていくライトノベル原作アニメ。藤井俊郎監督、制作はウマ娘二期のスタジオ櫂。これはアニメの前にコミカライズ版を読んでいてある程度内容を知っていたので、だからこそアニメ版の仕上がりには驚かされた。一話はこの作品の縮図とも言えるエピソードで、とにかくも一話だけでも見てもらいたいような完成度になっている。高精細でくすんだ背景、環境音に絞った音響、セリフも少なくゆったりとした展開に寂寥を滲ませながらカブが世界を彩るのとともに劇伴が鳴る。閉じられていた方の部屋のカーテンがバイクを見るために開かれるのも印象的。二話も、主要な展開やセリフは同じなのに驚くほど漫画版(原作は小説)と違っていて、語りのスタイルが完全に変わっている。モノローグや説明やお約束な描写をバッサリ切って全体を完全に組み上げ直している。淡々としながら情感のある劇伴ともども、強靱な地味さに感動的なものがある。なんでもないことなのにちょっと涙が出そうな力がある。音、絵、時間の使い方に説得力があるというか。カブはどこにでも行ける、という礼子のキメのセリフに返答をしないまま時間を取って、交差点を曲がって知らない店に行くことで返事に換えるあたりの描写などもいい。四話では雨に降られてイヤーな顔してるのと雨具を買って嬉しそうな顔の対比が雄弁に語る。丁寧な過程の描写だけでしっかり見せるものを作れている。よく言われるように中盤あたりからは主人公小熊のアウトロースタイルが顔を出してきて結構賛否が分かれるようになる。風邪で諦めかけたけどすぐ治ったことで修学旅行にカブで行くというあたりとか。でもカブという自由を得た人間が学校のルールごときには縛られないわけでこれは良い。抜け出して二人乗りで海辺を走る、きらきらした二人の世界が百合めいて鮮やかでもあった。やめろって言われたらやめるか、と聞かれて「次からやめるかな」のしれっとした返しとか胆力があって笑ってしまう。ただ11話の冬の川に落ちた椎という子をカブの前カゴに入れて走るシーンはやっぱり殺す気かとしか思えなくて違法な二人乗りよりまずこれだろ、と思ったりした。アウトロー的なところよりも妙なカブ至上主義が出てくるのが気になる。アニメの後半はリアル寄りの演出や描写とそういう原作の厄介さとが齟齬を来していく過程という感じもした。かなり弱毒化に頑張っていたけど。最終話は冬に春を手に入れるために鹿児島佐多岬までカブで行く旅路で、いやにあっさり着いた感はあるけど、いつも行くことのない知らない角を曲がると本州の端までの旅になる広がり方は良かった。「自分で何かを望む」のを助けてくれる足、としてのスーパーカブ。気にあるところは多いけど、この作品はロボットを操縦して大きな力を得たり、プリキュアが化粧をして変身するように、カブに乗ることで変身する話だったんだろうし、それが友達の命を救ったり春を捕まえに鹿児島までするっと行けてしまう魔法の話だったんだと思う。何もない子に与えられるカブという魔法。シンデレラというにはクセがありすぎる気はする。魔法の機械じゃないとは言うけど、だって世界の色が変わるんだしね。OPで「まほうのかぜ」という曲名が出るときに世界が色づくんですよ。リアリスティックな描写で勘違いしていたけど、そう思えば終盤のアウトロースタイルも飲み込める気がしてきた。思えば監督は18ifの三話を担当した人で、急に良い話が来て驚いたのを覚えている。両親がなく世界の色を失った少女が色を取り戻すというところも同じだしドビュッシーが流れるところもバイクに乗るところまで同じだ。依頼を受けて原作を読んだ時に18ifの演出方針で行けると思って引き受けた、とある。 最近読んだ本 - Close To The Wall
原作小説一巻を読んだ時の感想はここに書いた通りで、「最初のバイクに愛着を持つこととカブというバイクが優れている、と思うことは違うし、カブ乗りに仲間意識を持つのはわかるけど、それが「優れた機械」という選民意識と繋がってるのがどうにも厳しい」、と思った。趣味ものとしてここら辺はどうかと思うし、原作のパンク少年のくだりとかはカットして正解だった。
西田征史総監督原作脚本、MAPPA制作による水球アニメ。これは非常に面白いスポーツものだった。主人公みなとが、全国レベルだった水球にかけた中学三年間の記憶を、母の運転していた車の事故でなくしているという結構な飛び道具なんだけど、記憶喪失とそれでも残るものを二転三転させながら、ワンマンとチームワークという対立構図をロジカルに操作していく脚本は唸らされる。元有名選手だけど記憶喪失の主人公に色んな人が言い寄ってくる序盤はちょっとどうかと思うところもあるんだけど、記憶喪失でも快活な主人公が再度水球を始め、不慣れな人も多い弱小水球部でみんなと一緒にやって行く序盤のよさが、中盤記憶が復活して記憶喪失以後の人格が記憶と共に失われてしまう、と反転していく。その復活した人格というのが自負ゆえにヘタな人に厳しいギスギスしたもので、同時にその自負を支えていた水球の上手さが失われてしまっている窮地にも立たされる。話としてはここからが本番で、性格アレでも極限の努力を続けられる才能を持つみなとをめぐって、ワンマンチームかチームワークか、というテーマを顔を出すんだけど、お前のワンマンをみんなが認める、という展開に持っていったのは面白いところ。そして、11話ではワンマンたる実力を認められたみなとが今度は妹の明日海はじめ、他人の努力を認め皆を応援する側にまわることで、少し前の自分も信じてチームワークの再構築に成功する。明日海らの演奏という集団行動が重なる演出も熱いし父の応援も良い。最終話の個々人のナイスプレイが連なってみなとにボールが来ての、過去のみなとのワンマンぶりをフェイントに利用してのチームワークという解決が見事で感動的。この回の楽曲演出が面白くて、アバンがエンディング曲から始まって「事故」で楽曲が中断して、目が覚めたあとに曲が再開して時間が再び流れるように「壊れた世界の秒針は」の曲名が出る。最後の「Forget Me Not」にみなとの名前を被せて、忘れないでということにミーノット=みなとという名前の由来なのかなと思わせる。消えた穏和なみなともみなとの一部になって、というか。最後の家族の光景に繋がっていくのも綺麗な構成だ。事故で時間が止まったのは母親もだったわけで。
Deep Insanity THE LOST CHILD スクエニ原案でシルバーリンク制作アニメ。怪物の徘徊する地下世界に潜る任務に従事する小隊を描いたアニメで、二話の餅木スミレという元アイドルを描いた回や、小鳩麗香回などヒロイン回が結構良くて、本筋の話自体にそんなに興味持ててないところがあるけど萌えアニメとしては結構な位置につけてるみたいな感じで見てた。無機質なサブタイトルが反転するギミックがなかなかの見所。
Studio 3Hzのオリジナル劇場アニメ。大地葉もいるしスタジオ3Hzが英国スパイの代わりに忍者で美少女アクションをやってみたという雰囲気で、終盤のアクションは良いけど話は特に面白いということもないのが惜しい。キャラデザ斎藤敦史、ラブライブスーパースターの人だ。父・祖父を殺された律花と毒親の父を持つミリアの二人の娘をキーにしてるんだけど、ローレンの凡庸な狂キャラぶりに作品全体が取り込まれてしまったよう。なんというか月刊連載漫画の増ページ一話目というか、TVシリーズの前日譚みたいな感じが。パイロット版という印象。冒頭の律花を下から登っていく作画はなかなか変態的。最後のバトルのまるでスケートのようなアクションは江畑諒真のアブソリュートデュオOPを思い出したけど特にスタッフにはいないのかな。英字スタッフロールは滅んで欲しい。誰も分からん。劇伴スタッフにブルガリアのチームがいるんだな。
SB69スターズ OP Plasmagica & Mashumairesh!!「ドレミファSTARS!!」 ウィクロスDA OP No Limit「D-(A)LIVE!!」 無職転生 OP 大原ゆい子「旅人の唄」
ゲキドル ED アリス「制服DOLL」
シャドーハウス ED Reona「ないない」
カノジョも彼女 ED 麻倉もも「ピンキー・フック」
かげきしょうじょ ED 渡辺さらさ×奈良田愛「星の旅人」(ver違い含む)
アクアトープ OP ARCANA PROJECT「たゆたえ、七色」
サニーボーイ ED 銀杏ボーイズ「少年少女」
マギアレコード二期 OP ClariS「ケアレス」
〈東欧の想像力〉のおそらくはノンフィクションを扱うスピンオフシリーズ〈東欧の想像力エクストラ〉第一弾はヘモンの自伝的エッセイ集。母国語と英語、戦争の前と後、サラエヴォとシカゴなど幾つもの分裂において、それでも物語ることを選ぶ「人生」の諸相。本書原題はThe Book of My Livesとあり、所収エッセイの半分ほどにLife、Lives、人生、生活と言う言葉が表題に入っている。